累-かさね-7巻のネタバレ感想【過去をもたない、新たな女優の誕生】

累-かさね-

(松浦だるま『累-かさね-』7巻)

 

累の続きを書こうと思っていたら、いつの間にか日にちがどんどん経ってました。
前回いつだっけ…?あ、4月か。

くろやんです。
『累-かさね-』7巻のあらすじや感想を紹介します。

 

植物状態となってからも、ずっと意識はあり続けたニナ。
「丹沢ニナを消してほしい」という彼女の願いを、6巻で野菊は聞き入れます。
それは、女優“丹沢ニナ”とニナ自身の死を意味していました。

 

ニナが亡くなったことで、丹沢ニナとして舞台に立てなくなった累。
ほとぼりが冷めるまでの間、しばらく身を隠すことになるが…。
その間、累は失ってしまった名声や友情、愛情を思い出す。

このまま醜い顔で、一人暗いところで生きるのは嫌だ。
光の中で美しくありたい。
自分が生きるためには、美しさが必要だと強く感じた累は…。

 

以下、7巻のネタバレを含みますので注意してください。

 

スポンサーリンク

互いの思惑が絡み合う

ニナが亡くなった翌日、累は野菊と一度電話のやり取りをしていました。
そのとき野菊は、「心許せる友達って、本当にあなたしかいない」「つらい時はよくあの海に行くの」と、言いました。
あの海とは、以前累と野菊が一緒に過ごした思い出の場所でした。

 

野菊の言葉を思い出した累は、導かれるように海へと出掛けます。
会える確証も、会ってどうするかも考えないまま、海にやって来た累。
そこで、偶然にも野菊と再会します。

 

実はこれは偶然ではなく、野菊が仕組んだ罠でした。
あらかじめ、電話で海によく行くことを仄めかしておき、彼女は累が現れるのを待っていました。
累が隠していた嘘も罪も知っている野菊と、野菊の真意までは知らない累。

とっさに野菊の名前を呼んだ累に対して、「どうして…私の名前を?」と、初対面の振りをして野菊は尋ねます。
二人は人目の多い海から、近くの神社へと場所を変えます。

 

kasane7-1

(松浦だるま『累-かさね-』7巻28p)

 

おどおどと縮こまっている姉(累)の姿を見て、野菊は戸惑います。
大勢の人を魅了した丹沢ニナと、彼女が同じ人物だなんて…と。
しかし、ここで累が口を開き「ニナは私の恩人なの」と、大胆にも嘘を並べ始めます。

 

私は元々ニナのマネージャーをしていて、ある日思い詰めて自殺未遂をしてしまった。
でも、植物状態となっていた自分を、ニナはずっと看病してくれていた。
植物状態から目覚めた私に、ニナは野菊のことを話してくれたけど、数日後にいきなり失踪して姿を消してしまった…。

 

そんな話を累は野菊に語っていきます。
さすが元人気女優。
累の作り話は、まるでそれが真実であるかのように聞こえます。
惑わされてはダメだ、と思う野菊。
そして、野菊も自分の事情を語り始めます。

 

ニナは私の心の支えだった。
自分自身のすべてが嫌だと思っている私にとって、彼女と過ごす時間だけが唯一の救いだった。
すべてを捨て別の誰かになって、まったく違う人生を生きられたらいいのに…。

 

そう話す野菊に、累は「自分を捨てて、別の誰かに成りたい?」と問いかける。
美しい野菊の顔を手に入れたい累。
自分を捨てて別の誰かになりたいと望む野菊。

 

互いの利害が一致したと思った累は、顔を入れ替える口紅を野菊の唇にぬります。
物陰へと誘い、累は野菊へ口づけしようとします。
野菊は自分が母と同じ運命に呑まれてしまうのではないか、と恐怖する様子を見せるが…。
「呑まれるものですか。あなたもろとも、呑み込むのは私!」と、反対に野菊は自ら累へと口づけをする。

 

kasane7-2

(松浦だるま『累-かさね-』7巻56-57p)

 

累と野菊の顔が入れ替わります。
互いの望みを叶えるために、取引がしたい。
そう話を持ちかける累と、驚きながらもほくそ笑む野菊。

 

ここまで互いの思惑通りに進んでいきます。
生きるために、美しさが必要だった累。
別の誰かになりたいと願う野菊。
ただ、野菊の願いは多少は本心が含まれているものの、本当の思惑がまだあるよう。
黒い想いを隠しながら取引まで話を運ぶところは、どちらもなかなか腹黒いやら、したたかやら。

 

咲朱(さき)

新たに協力関係になった野菊のことを、累は羽生田に紹介します。
羽生田は淵透世そっくりの野菊を見た瞬間から、彼女の正体に気付いているようでした。
野菊は累の異母妹。
本物の淵透世と、累と同じ父親である海道与(かいどうあたえ)との娘だと。

 

羽生田は野菊が何か企んでいることに気付くが、今は累を舞台に立たせるため、野菊が必要だと考えます。
「今はお互いの思惑に踏み込みすぎないようにしないか」と、野菊に言う羽生田。
野菊もそれに了承します。

 

舞台への執念、生きるために美に執着する累と、本当の目的を隠しながら、累に協力する野菊。
こうして、淵透世そっくりの美貌と淵透世譲りの演技力をもつ新たな女優が誕生する。

丹沢ニナでも、淵累(かさね)でも、野菊でもない。
経歴も素性も一切明かさない。
過去をもたない新人女優、咲朱(さき)

 

kasane7-3

(松浦だるま『累-かさね-』7巻125p)

 

咲朱の舞台を観た人達は口々に言う。
「本当に新人?」
「ベテランに引けをとらないわ」
「少し丹沢ニナに似てる?」
「あのスケールは淵透世だろう」
衝撃的にデビューを果たした咲朱は、謎多き天才女優として新人でありながら注目されることになります。

 

咲朱は冷艶(れいえん)という表現が合いますね。
ニナの顔で舞台に立っていた時と違って、咲朱になってからの累は鋭く尖った印象が強いです。
累は野菊の思惑に気付くことなく、執念で新たな舞台へと突き進んでいきます。
どんどん破滅へ、闇へと向かっているようにも見える…。

 

鬼門の台本

咲朱の素性を隠すため、羽生田は事務所を用意し、関係者として堂々と累の楽屋へと顔を出すようになります。
評判や知名度が上がってきた咲朱へオファーが3件来ている、と羽生田は言う。

2件は主演だが、大きな規模の舞台ではない。
そして、もう1件は準主役だが、世界的に有名な演出家・富士原佳雄(ふじはらよしお)の舞台。

 

kasane7-4

(松浦だるま『累-かさね-』7巻134p)

 

富士原の名前を聞いて累も驚きます。
しかし、羽生田は渋い表情を見せ「台本が鬼門だ」と言う。
シェイクスピアのマクベス。
この舞台で登場する“マクベス夫人”は、累の母(いざな)最期の役でした。

 

マクベス以降、順風満帆だった淵透世の女優としての運命が狂い出し、その後再び舞台に立つことはなかったという。
羽生田は累が同じ運命を辿るのでは、と気にかけてオファーを受けることを渋っていたそう。

 

 

羽生田が渋っていた理由が、更にもうひとつ。
今回の舞台の主演マクベス役が、あの雨野申彦だということ。
彼は以前、丹沢ニナとして舞台に立っていた累が付き合っていた男でした。
リスクが高すぎると羽生田は考える。

 

丹沢ニナだった女が変身しているなんて、わかりようがない。
そう答える累に、「不安なのはそこじゃねえ。お前だよ」と、羽生田は指摘する。
雨野への未練から、累がぼろを出すのではないか。
羽生田の指摘は累の怒りに触れたようで、「随分と見くびられたものね」と累は言う。

 

そんな生半可な覚悟で、舞台に戻ってきたんじゃない。
私は丹沢ニナでも、淵透世でもない。
「いいかげん、死んだ人間に私をかさねて見るのはおやめなさい」
羽生田の顔を掴むと、累はそう言い凄みを利かせる。

 

「ならお前は何者だ?」と問う羽生田に、「私は咲朱。過去をもたない女よ」と答える累。
母親を超えるため、淵透世の運命を狂わせた舞台『マクベス』のオファーを受けることに。
「のぞむところよ…!」と、累は言い放つ。

 

 

まとめ

今回、累と野菊が協力関係になります。
かつての累とニナのように。
そして、新しく誕生した過去をもたない新人女優、咲朱(さき)
累がニナの顔で舞台に立ち始めた時と比べると、咲朱は冷たさと鋭さを感じます。

 

鬼門のマクベスの舞台に強気に臨む累。
これは破滅へと…終わりへと向かっている予感がしますね。
7巻終わりでマクベスの稽古が始まり、累は雨野と再会します。
もちろん、顔が変わっている咲朱の正体に雨野が気付くはずもなく。
しかし、咲朱に何かを感じる雨野。

 

 

さまざまな想いが交差し、最後の舞台がこれから始まるようです。
この『累-かさね-』自体も終わりが近いということでしょうか。
どういう結末を迎えるのか、ハッピーエンドじゃないことは確実だろうなぁ…。

 

今回の7巻では脇役の彼らの話も出てきます
羽生田といざな、野菊と天ヶ崎。
短いエピソードですけど、羽生田といざなの過去が明かされます。
ただ、断片的で肝心な部分は伏せられているので、これは小説「誘-いざな-」の方でわかるかもしれないですね。

 

あと、野菊と天ヶ崎の話。
これまでギブアンドテイクの奇妙な関係だった二人が、ある出来事をきっかけに関係性が違ったものに変わっていきます。
生身の人間味を感じさせるエピソードです。
シリアスで暗いけど、人間ドラマを感じる内容で好きです。

 

 

そして、累と雨野。
この二人も不思議な運命からか、再び舞台で共演することになります。
雨野が咲朱の正体に気付くのか。
累が雨野への感情でぼろを出してしまうのか。

 

見くびらないでほしいと、羽生田に強気に出た累ですが。
楽屋のドアが開けられる瞬間、雨野の姿を重ねて思い出すということは、やはり雨野への未練があるよう。
咲朱の正体が丹沢ニナだった、丹沢ニナの本当の姿は淵累だった。
雨野がそれらすべてを知った時に、どんな反応をするのか。

 

累の執念や野菊の思惑。
それぞれの想いや人間模様がどうなっていくのか、面白くなってきました。
相変わらず、展開がシリアスで暗いけど面白い!

続きはこちら。
累-かさね-8巻のネタバレ感想【罪を踏み越え、そして最後のカーテンコールへ】

スポンサーリンク
累-かさね-
スポンサーリンク
スポンサーリンク
あの漫画のここが気になる!!!
タイトルとURLをコピーしました