(奥浩哉『いぬやしき』1巻)
ついこの前、年が明けたと思ったら、今日からもう2月になってました。
早いもんですね。くろやんです。
今回はGANTZで有名な奥浩哉先生が、現在イブニングで連載している『いぬやしき』を紹介します。
これは主人公が58歳サラリーマンという一風変わった漫画です。
ごく普通の平凡な日常と、ありえない展開の非日常が交差している作品です。
以下、1巻内容のネタバレ含みますので注意してください。
犬屋敷さんの日常
主人公は犬屋敷壱郎(いぬやしきいちろう)
二人の子どもをもつ、平凡なちょっと冴えないサラリーマンです。
白髪頭と顔の皺と腰痛から、58歳なのに既におじいちゃんに見える老け具合の犬屋敷さん。
物語は、彼が念願の一戸建ての家を購入し、家族みんなで引っ越すところから始まります。
犬屋敷さんが家を建てた場所は、大きくて立派なお宅の裏にある奥まった土地でした。
ようやく何年もかかってお金を貯めて買ったのに、子ども達からは「ちっさ…」「何でこんな奥まった土地買ったの?意味わかんないよ」と、ブーイングの嵐。
奥さんの方が強くて、夫としても父親としても威厳がない犬屋敷さん。
もともとの性格が温厚なのも関係しているでしょうね。
家族に対しても強く言い出せないため、家庭内での発言力がほとんどない状態…。
新しい家での生活が始まり、数日経ったある日。
夜、仕事帰りに牛丼屋で犬屋敷さんが牛丼を食べていると、ちょうどその姿を長男と長男友達が見かけます。
(奥浩哉『いぬやしき』1巻21p)
こ、これは切ない…。
何だか居た堪れなくなる切なさと寂しさを感じる…。
一生懸命家族のために働いて生きているのに、こう捉えられてしまうのは悲しい。
1話目は犬屋敷さんの日常が主になりますが、まあ悲しくなる切なさ!
日々真面目に働いて家族を養っているけど、奥さんにも子ども達にもないがしろにされている。
ある時オヤジ狩りにあっていたサラリーマンを見かけ、助けようと思うものの、勇気と力が足りないため実行できない。
警察に電話しようとしたが、一緒にいた長男に「カッコつけなくていいよ。期待してないよ、強い親父とか。どうせ何も出来ないんだし」と、言われてしまいます。
や、やめたげてよぉ…。
ある日、犬屋敷さんは健康診断で再検査の通知を受け取ります。
病院で再検査を受けると、医師から「胃ガン」だと診断され…。
しかも転移がひどく、もって3ヵ月だと言われてしまう。
もう踏んだり蹴ったりだよ!
家族に連絡するものの、パートで勤務中の奥さんは携帯の着信に気付かない。
長女は「あんま話したくない」と言って携帯に出ない、長男も着信に気付いているけど出ない。
家族の誰とも連絡が取れず、一人寂しく公園のブランコに乗る犬屋敷さん。
「ゴンドラの唄」を口ずさみながらブランコをこぎ、静かに涙を流します。
もうやめたげてよぉ(´;ω;`)!!
切なくなるから、悲しくなるから!
ある日突然、機械の身体になったら
ここまでだと初老の冴えないおじさんが家族にないがしろにされ、追い打ちをかけるように、突然余命わずかと診断され、ただの救いのないストーリーになってしまいますが。
この後、大きく展開が変わります。
家に帰ってきた犬屋敷さんは、家族に病気のことを伝えようとするが、なかなか言い出せず。
飼い犬『はな子』と共に、ふらふらと夜の住宅街を歩きます。
ちゃんと話せば、家族のみんなは泣いてくれるのだろうか。
そんなことを考えた犬屋敷さん、急に立ち止まったかと思えば、はな子を置いて一人走り出す。
はな子は、走り出した犬屋敷さんの後をちゃんと追っていく。
公園の丘の上、はな子を抱きしめて大声で泣く犬屋敷さん。
自分のこれまでの人生について、一緒に暮らしてきた家族について、色々な感情が込み上がってきたんだろうな…。
(奥浩哉『いぬやしき』1巻45p)
その時、突然謎の光に照らされ、犬屋敷さんは謎の宇宙人達の事故に巻き込まれてしまう。
宇宙人達は「この星の知的生命体を破壊してしまった」「では、すみやかに表面的にだけでも復元しろ」と、勝手に話し合い…。
こうして犬屋敷さんは、謎の宇宙人達にいきなり身体を機械化されてしまいます。
すんごい展開(;´∀`)
機械化されてからの犬屋敷さんの日常は大きく変化します。
身体が機械になったので注射の針も刺さらないし、腰痛もなくなって胃ガンも関係なくなる。
血も出ない、臓器もない機械の身体。
自分はもう犬屋敷壱郎ではない。
ならば、家族を養う必要もない…と考える犬屋敷さん。
自分の存在意義について悩んだ彼は、はな子を連れて、夜家を出ます。
そこで例の公園に出掛けた時、一人のホームレスの男と出会う。
このホームレスの男が、理不尽にも数名の中学生にリンチにされようとしていた。
機械の身体を使い、犬屋敷さんは彼を助ける。
ホームレスの男は涙を流して「ありがとう…本当にありがとう!!」と、犬屋敷さんに感謝します。
人の命を救ったことで、自分は人間だと感じる犬屋敷さん。
心がある人間だ。生きている感じがする。
犬屋敷さんは自分が人間である証明のため、これから一人でも多くの人の命を救っていくと心に決めます。
(奥浩哉『いぬやしき』1巻182p)
これまで理不尽に虐げられる人を助けたいと思っても、実行する勇気と助ける力がなかった犬屋敷さん。
機械の身体になったことで、人を助けることを自分の生きる道としていきます。
もう一人の機械にされた人間
謎の宇宙人達の事故に巻き込まれたあの現場には、犬屋敷さんの他に実はもう一人いました。
1巻最後の話で登場する高校生、獅子神皓(ししがみひろ)です。
彼も犬屋敷さんと同じく、機械の身体となっていました。
幼馴染の安堂直行(あんどうなおゆき)がしばらく学校に来ていないことを心配した皓は、直行の家に行きます。
ベッドで横になったまま起きようとしない直行に、皓は最近この近辺で通り魔が出ている話をします。
直行に「アレおまえじゃね?」「ずっと学校休んでた間…何してたんだ…?」と、真面目な顔で問いかけた後、「なんてな!」と笑い飛ばす皓。
不審がる直行の反応に大ウケ。
それから、漫画(GANTZ)の話をする皓と直行。
GANTZを人殺しのクソマンガとアンチする皓に、「ネットしか世界がないとか…中身のない人間だな」と反論する直行。
直行の言葉に「中身…か…。ないっちゃないけどね…」と、言う皓。
(奥浩哉『いぬやしき』1巻198p)
自分はもう獅子神皓じゃないと告げ、皓は機械になった身体を直行に見せる。
ここで1巻が終わります。
機械の身体となった犬屋敷さんと獅子神皓。
この年齢も立場も考えも違う二人が、これからどんな行動を起こしていくのか。
それぞれの対比が、この漫画の見どころだと思います。
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まとめ
GANTZもそうですが、奥先生の漫画は背景の丁寧さがハンパないですね。
冒頭の犬屋敷さん一家が車で新居へ行くカラーの見開き、ほんと細かいところまで描かれています。
やばい、クオリティ高すぎ。
1巻は、家族にないがしろにされる犬屋敷さんの哀愁漂う切なさにしんみりきます。
牛丼屋の長男友達の台詞が心に刺さる( ;∀;)
も、もうやめたげてよ。
余命3ヵ月とわかり、夜の公園で、はな子を抱きしめて声を上げて泣く犬屋敷さん。
家族に病気のことを言えず、一人で悩む犬屋敷さん。
あの時、皓も同じように夜の公園に一人でいました。
皓は何をしてたんだろう。
2巻はもう一人の主人公、獅子神皓の話が中心になります。
機械となってしまった犬屋敷さんと皓、まったく違う二人がこれからどうなっていくのか。
2巻では二人が顔を合わせることになり、物語が一気に盛り上がってきます。
そういえば、犬屋敷さんと皓は割と近くに住んでいますね。
犬屋敷さんの長女(麻理ちゃん)と皓は同じクラスだし。
麻理ちゃん可愛いよ麻理ちゃん。
柴犬のはな子も可愛いよ。
続きはこちら。
いぬやしき2巻のネタバレ感想【もう一人の主人公・獅子神皓の日常】