(松浦だるま『累-かさね-』5巻)
くろやんです。
『累-かさね-』5巻のあらすじや感想を紹介しようと思います。
4巻から登場した累の腹違いの妹、野菊。
淵透世そっくりの美しい容姿を持ちながら、彼女は自分の美しさを忌み嫌っていました。
憎い淵透世の娘である累に会いたいと思った野菊は、協力者を得て、独自に累の居場所を突き止めようとします。
その後、運命的に出会うことになった累と野菊。
二人は互いの事情を知らないまま交流を深めていくが…。
以下、5巻のネタバレを含みますので注意してください。
野菊の協力者
4巻終わりで、野菊の協力者として登場した天ヶ崎祐賭(あまがさきゆうと)という男。
彼は教師でしたが、その容姿のことで生徒らに蔑まれ見下されていました。
容姿に関しては、累と境遇が似ていますね。
(松浦だるま『累-かさね-』5巻109p)
生徒に怒りや憎しみを抱いたところで、職を失うことを恐れ、文句を言うこともできず。
ひたすら生徒を壊す妄想で、その憎しみを昇華させていたらしい。
く、暗い。
そんなある日、教師でありながら野菊を買った天ヶ崎。
美しい容姿に加えて、生徒らと同じように、自分を蔑み嫌悪する鋭い眼をもつ野菊を彼は気に入ったという。
加えて生徒らとは違い、買った野菊を好きに壊すことができる。
お互いギブアンドテイクの関係で、野菊は自分の体を差し出す代わりに、天ヶ崎に累の居場所について調べるよう頼みます。
野菊の望みを叶えるため、天ヶ崎は淵累のこれまでの足跡を辿ることに。
天ヶ崎は累の小学生の頃の同級生、教師と直接会い、累についての情報を聞き出していきます。
野菊の協力者として新しく登場した天ヶ崎ですが。
累と似た境遇をもつ彼も、どこか普通とは違う歪んだ性格をしています。
というか、この『累-かさね-』に出てくる登場人物は暗い人が多いですね!
野菊も野菊で、なかなかの暗さですけども。
ストーリー的に重くなるので、暗い人が多いのもしょうがない(;´∀`)
そして、野菊と天ヶ崎の歪な関係は、この5巻以降も続いていきます。
カギのかけられた部屋
天ヶ崎が累の足取りについて調べている頃。
野菊は以前客だった男に、ストーカーまがいの嫌がらせを受けます。
累とお茶をした帰り道、野菊はその男に跡をつけられてしまう。
天ヶ崎に連絡するがつながらず。
野菊はとっさに、累に助けを求めることに。
間一髪、累が助けに来てくれたおかげで、何とかストーカー男から逃れることに成功。
その後、野菊は累の家に泊まる流れになります。
最初は家に他人を入れることをためらっていた累も、野菊を一人にすることができなかったよう。
累、やっぱり非情にはなりきれないですね。
野菊を部屋にあげた後で、ちょうど羽生田に呼び出された累は一旦外に出ます。
その間、部屋に一人になった野菊。
天ヶ崎から折り返しの電話がかかり、そこで野菊は天ヶ崎が調べた淵累の情報を聞くことになります。
淵累は自殺未遂をし、現在は植物状態だということ。
そして、淵累が以前“丹沢ニナ”のマネージャーをしていたということ。
今、仲良くして心を許しているニナと、憎い淵透世の娘である累がどうして繋がるのか。
野菊が疑惑を抱いたところで、奥の部屋から何か物音が聞こえます。
不思議に思った野菊が、そのドアを開けようとしますが、カギがかけられていました。
丹沢ニナと淵累の繋がり。
カギのかけられた部屋。
得体の知れない疑念を晴らすため野菊は、累がお風呂に入っている隙に肌身離さず身につけていたカギを見つけます。
そのカギを使い、例の部屋のドアを開けた野菊。
部屋のなかには…植物状態となっている本物の丹沢ニナが眠っていました。
とうとう野菊が、累の秘密である丹沢ニナの存在を知ることになります。
野菊は母の時と同じ、いくつかの共通点に気付きます。
美しい優れた女優と、その美女に閉じ込められた醜い女。
自分が仲良くしていた丹沢ニナの正体は、実は淵累ではないのか?
野菊の疑惑が、徐々に確信へと変わっていきます。
秘密へと近付く
野菊が累の部屋に泊まった次の日。
帰り際、野菊は累に「物音のした部屋、何かいるでしょう?」と尋ねます。
しかし、「何もいないわ。本当よ」と累に笑顔で返されます。
丹沢ニナについて、更に詳しく調べることにした野菊。
天ヶ崎の協力のもと、ある程度の情報は得られたが、決定的な証拠が必要でした。
その決定的な証拠を確かめるため、野菊は丹沢ニナの母親に会うことにします。
野菊が確認したいと思ったもの。
それは、成人する前の本物のニナが演技をしている姿でした。
ニナの母親に昔の映像を見せてもらった野菊。
違いは歴然でした。
今、女優として舞台に立つニナは、本物の丹沢ニナではないと野菊は確信します。
ニナの母親は正しいのに、周囲に信じてもらえなかった。
自分に優しくしてくれていたニナは偽物だった。
そう悟った野菊は、激しい怒りを覚えます。
このときの野菊の顔が恐い( ゚Д゚)
野菊は幼い頃、母と透世(いざな)が口づけをして顔が入れ替わるのを見たことがありました。
その口づけの秘密について調べるため、一旦野菊は屋敷に戻ることに。
忌々しい記憶が残る屋敷に戻った野菊。
何か“いざな”の痕跡はないかと父親の書斎を調べていたところで、古びた手帳を見つけます。
手帳には父親のものではない字で
「あの朱にこんな力があるなど。顔が変化した」
「朱を口紅のようにぬり、口づけていた」と書かれていました。
口紅をぬり口づけをすることで、相手の顔を奪うことができる。
その秘密を野菊は知ることになります。
まとめ
5巻は、ほぼ野菊の視点で物語が進んでいきます。
野菊が累の秘密を暴こうと、探偵ばりに色々調査を開始します。
この巻はサスペンスっぽいですね。
野菊の協力者、天ヶ崎が累の情報を得るため、小学生の頃担任をしていた教師に会います。
そこで、図工の授業で累が描いた絵を見せられる場面があります。
いつも暗い色彩だった累の絵が、イチカとの出来事があった日を境に、がらりと変わったというエピソード。
個人的に、こういう深層心理を表したような話好きです。
累は羽生田が協力者で、野菊の方は天ヶ崎が協力者です。
最初はちょっと嫌な印象が強い天ヶ崎ですが、その後も読み進めるとまた印象が違ってきます。
『累-かさね-』では様々な男女の関係が出てきますが、どれも歪だったり不思議な関係が多いです。
そのややこしい人間模様も見どころだと思いますね。
そして、5巻ではとうとう野菊が植物状態となっている丹沢ニナの存在を知ることになります。
徐々に累の秘密へと近付いていく野菊。
次の6巻で、あるひとつの大きな転機を迎えます。
…改めて思ったけど、やっぱりストーリーが重くて暗いよ!
元気がない時に読んだら余計凹む!
というわけで、元気がある時にどうぞ。
続きはこちら。
累-かさね-6巻のネタバレ感想【舞台の幕切れと、生きるための渇望】