(松浦だるま『累-かさね-』9巻)
どうも、くろやんです。
今日は『累-かさね-』最新刊の発売日ですね。
前回から気になる最後で終わった、『累-かさね-』9巻のあらすじや感想を紹介しようと思います。
母を苦しめ、顔も名も奪った淵透世(いざな)を憎む野菊。
その娘である累へ復讐を果たそうとする彼女は、累に近付き顔を入れ替える協力者となる。
野菊は自らの思惑を巧妙に隠し、累の信用を得ていくことに成功し、舞台『マクベス』は最終公演のカーテンコールへと向かう。
それは、すべて野菊が計算した復讐のクライマックスでもあった。
復讐の果てに、それぞれがどのような結末を迎えるのか。
以下、9巻のネタバレを含みますので注意してください。
客席へ向ける笑み
『マクベス』最終公演直前。
最後の顔を交換させる時間となり、累と野菊は倉庫に入ります。
わざと倉庫の蛍光灯をぬいて、室内を暗くしておいた野菊。
これは、偽の口紅をぬった累との一度目の口づけで、互いの顔が戻らないことを累に悟られないようにするためでした。
(口紅の効果を持続させるには、二度口づけが必要なので)
別れ際に累が野菊の手を握り、不安を見せます。
「怖いの…初めて、こんなに緊張してる」
震える手で、野菊の手を握りながら話す累。
(松浦だるま『累-かさね-』9巻)
重要な最後の上演で緊張している。
あなたが見てくれているだけで心強い。
だから、今日も最後までしっかり見ていて。
そう累は野菊に胸の内を明かし、いよいよ最終公演が始まります。
客席で観客と一緒に、累の舞台を観る野菊と羽生田。
昨日まで以上の表現力で、累はマクベス夫人の冷酷な面と心が病んでいく様を演じていきます。
そして舞台が終わり、いよいよカーテンコールの時間が訪れます。
スタンディングオベーションで、観客達が舞台上にいる累へ拍手を送っている中。
「口紅の効果が切れるまで、あと数秒…」
客席に向けて笑顔を見せる累の姿を見ながら、カウントダウンを開始する野菊。
しかし、カウントダウンが0になっても累の顔は戻らない。
「まさか…いえ、そんなはずはない…」と、動揺する野菊。
すると、舞台上にいる累が野菊の方へ視線を向けます。
赤い唇を歪めてあざ笑う累。
その累の表情を見て、野菊は恐ろしさを感じます。
急に眠くなり、倒れ込んでしまう野菊。
隣にいた羽生田が野菊の体を支えて、耳元でこう囁く。
「すごいと思わないか。この最終公演、あいつは見事に演じ切った。きっと胸の内は、お前の裏切りによって、ずたずたに引き裂かれていたろうに」
そうきたか。まさかの展開!
野菊の裏切りは、羽生田に見透かされていたようです。
そして、客席の野菊へ向けた累の笑った顔。
怖いよ!かなりホラーちっくだよ!
もうあっちもこっちも嘘だらけ。
これで本音で語り合える
あの後、深い眠りに落ちてしまった野菊。
目を覚ますと、彼女は手と足を縛られた状態で、どこかの地下室に監禁されていました。
部屋にやってきた羽生田が野菊に語り始めます。
どこから野菊の思惑に気付いていたのか。
きっかけは、野菊が累に言った「過去や罪は消えなくとも、あなたは歩いていけるはずよ。私もあなたと一緒に、その地獄を歩んであげるわ!」という台詞。
羽生田はこの台詞を知っていました。
人を勇気づけるのに、殺すほど憎んだ父の言葉を使うのはおかしい。
しかも、『罪や過去は消えなくとも』という部分。
累の罪を知らなければ、わざわざこの言い回しを言わないだろう。
野菊は累の罪である丹沢ニナの死を知っている上に、それに関わっている。
そう羽生田は判断したようです。
羽生田が話していると、部屋に累もやって来ます。
(松浦だるま『累-かさね-』9巻)
野菊がニナを殺したらしいということ。
そして、自分の異母妹だということ。
それらの事実を、累は羽生田から聞かされました。
最終公演のカーテンコールで、野菊の思惑通りに累の顔が元に戻らなかった種明かしも語られます。
累は羽生田から、こう指示を受けていました。
上演中は倉庫で口づけをする時、口紅をポーチにしまうところを野菊に見せておくこと。
最終公演のみ、ポーチの中身をダミーの口紅にすり替えておくこと。
実は、累は最終公演の直前まで野菊のことを本当に信用していたようです。
何もなければ、ポーチの中身はダミーの口紅のまま。
しかし、最後の口づけの前に累がポーチの中を確認すると、ダミーではなく野菊がすり替えた偽の口紅が入っていました。
それを見て、信じていた野菊に裏切られたことを悟った累。
屈辱と怒りと悲しみと。
あの時、倉庫で口づけをした後で累の手が震えていたのは、緊張ではなくそのためでした。
被害者のように話す累の言葉を聞いて、「すべてはあなたと…いざなの犯した罪の報いだというのに!」と言う野菊。
いざなによって利用されて死んでいった母のことを話す野菊に対して、「お気の毒にね…けど、それが何?」と返す累。
あなたの母親を不幸にしたのは私じゃない。
あなたは憎む相手がもうこの世にいないから、やり場のない怒りを私にぶつけているだけ。
(松浦だるま『累-かさね-』9巻)
これまでの累の歩みを考えると、覚悟を感じる重い言葉。
開き直りにも見えるんですが、累の言葉も正論に聞こえてしまうんですよ。
去り際に、累は野菊に冷たく言い残していきます。
もし、死にたいというなら好きにすればいい。
野菊が自殺してしまっても、また代わりの標的を探せばいいだけだから。
口紅は手中にあるから、もう手段は選ばない。
そう冷酷に告げた累は地下室から出て行きます。
野菊の計画は失敗に終わり、累と羽生田によって、野菊は母と同じく地下室に監禁されてしまう結果に…。
なかなか容赦ない展開ですね。
しかし累も累で、信用していた野菊に裏切られて、屈辱と悲しみを味わうことになりました。
はじめは他者の顔を奪うことに対して迷いを見せていた累ですが、どんどん言葉も表情も冷たいものになっていきます。
負の感情の連鎖というか…誰も彼もが暗いし悲しいなぁ。
いざなと淵透世
今回の9巻では、累の母(いざな)の過去が明らかになります。
いざなと淵透世との出会いや、その後の海道との話です。
この漫画お馴染み、暗いやら愛憎渦巻くドロドロ具合!
昼ドラが一本作れてしまうヘビーな内容ですね。
「丙午の年に醜い子が生まれたら殺せ」という村の因習で、生まれてすぐ殺されるはずだったいざな。
いざなを取り上げた助産婦のおかげで命は助かったものの、彼女は人知れず社会から隔離され生きていくことになります。
育ての親以外の人間とは会うこともできず、山奥の小屋で何年も過ごす日々。
(松浦だるま『累-かさね-』9巻)
ある時、口紅の力を手にしたいざなは、同じ村に住んでいた槻浪乃(つきなみの)という美少女の顔を奪うことに成功します。
村の者14人を殺し火を放った後、いざなは村を去ったそう。
村を出て、都会にやって来たいざな。
顔は元に戻り金もなく空腹で、途方に暮れてしまいます。
その時、いざなの目の前を美しい顔を持つ女性が走って行きます。
思わず後をつけて行ったいざなは、小さな劇場にたどり着きます。
その劇場の舞台の上に、いざなが見かけた美しい女性の姿がありました。
これが、いざなと淵透世の出会いでした。
空腹のため、演劇を観た後に倒れたいざな。
倒れたいざなは劇場で休ませてもらい、その時に透世と初めて言葉を交わすことになります。
(松浦だるま『累-かさね-』9巻)
最初は拒んでいたいざなも、空腹と他に頼る人物もいなかったので、促されるまま透世の家に泊まることに。
気が弱く、お人好しな面を持っている透世。
このまま透世と繋がりを保ち続ければ、再び美しい顔を手に入れることができるかもしれない。
いざなは淵透世の家に居候しながら、彼女の口利きで劇場の掃除婦として働くことになります。
伝説の女優誕生と崩壊
ある日、熱が出てしまった透世。
もともと役者でいることに執着していない透世は、「行きたくない…」と本音をもらします。
「まだ少し時間がある。もう少し寝ていたらどうだ?」と、声を掛けるいざな。
透世が眠ったのを確認したいざなは、口紅の元となる赤い鉱物の粉を唇にぬります。
そして、透世へと口づけをしたいざな。
急いで劇場へ向かったいざなは、入れ替わった透世の美しい顔で素晴らしい演技を見せます。
女優、淵透世の誕生でした。
いざなは透世に事情を説明します。
その話を聞いて、意外にも透世はあっさり取り引きに応じてくれます。
(松浦だるま『累-かさね-』9巻)
その後、淵透世と協力関係を結んだいざなは、徐々に評判を上げていきます。
やがて評判を聞きつけて、いざなの演技を観に来た男がいました。
累と野菊の父親となる演出家の海道与。
淵透世の美しさと演技力を見て、海道は自分の演劇集団の中に透世を引き抜きたいと言います。
そうして海道の元で大きな舞台をこなしていき、さらに名声を得ていくいざな。
いつしか伝説の女優と呼ばれるようになった彼女は、名声だけではなく、女としての幸せも得ることになります。
それは、海道との結婚でした。
(松浦だるま『累-かさね-』9巻)
幸せの絶頂にいるいざな。
一方でニナの時と同じように、ただ空虚に生きているだけの透世。
やがて、いざなは海道との間に子ども(累)を身籠ります。
生まれた子が、自分にも妻にも似ていない醜い容姿をしていることに衝撃を受ける海道。
いざなの身辺調査をした海道は、いざなと透世が密会していることを知り、偶然それを目にしてしまいます。
自分の妻は醜い女だった。
そして、もう一人の美しい女と顔を入れ替えていた。
いざなは海道に屋敷から追い出され、生後間もない累を連れて路頭に迷うことに…。
残った海道は、美しい顔を持つ透世を妻に迎えることにします。
しかし、女優としての才能を持たない透世に失望し、次第に苛立ちを覚えていく海道。
彼が愛した淵透世という女優は、二人の女で作り上げたもの。
「そうか!取り戻せば良いのだ!材料はここにあるのだから」と、彼は何かを思いつく。
まとめ
まるで昼ドラ並に、ドロドロとした愛憎渦巻く内容になってきました。
そして、今回の9巻でやたらホラーな表情を見せる累といざな。
こ、こわい…( ;∀;)
そういえば、表紙のイラストも最初の頃と比べると、どんどん暗くなっていっていますね。
最初の淡い色彩から、暗く重いタッチに変わっていく様子が、内容とリンクしているように感じる。
『累-かさね-』は、ぜひ実写ドラマでやってほしいですね。
このサスペンスな展開と濃い感情描写を、リアルに実写でやってほしいなぁ。
アニメよりは実写向きだと思うんですよね。
今回、現在の累と野菊の話から、過去のいざなの話が始まります。
過去編スタートです。
朱磐での話は、確か小説『誘-いざな-』に出てくる内容だったはず。
『誘-いざな-』買ったもののまだ読み終わってないので、読んだらまた感想を書きたいです。
いざなと淵透世のやり取りは、ぎこちないながらもたまに和むんですよね。
ゆるふわ系らしい透世の突拍子もない発言に、いざなも面食らってしまうという。
最後の二人の結末が分かっているだけに、一緒に暮らしていた時の二人の何気ない会話が逆に切ない。
それにしても、透世が飼っていた野良猫の『ずんだ』って、どういう意図で名前を付けたんだろう…。
ずんだ…ずんだ餅?
いざなも『ずんださん』って呼んでたの?
9巻が全体的にドロドロすぎて、思わずこういう癒しを求めてしまう。
続きの10巻では、過去編の最後の結末までやるんでしょうかね。
そして、現在の累と野菊はこれからどうなってしまうのか。
監禁された野菊を助けるとしたら、やはり天ヶ崎の存在でしょうか。
あれ?今回、松浦先生のあとがきページがない?残念!
続きはこちら。
累-かさね-10巻のネタバレ感想【同じ星空を見上げ、目に映る星が違っていても】