累-かさね-13巻のネタバレ感想【真実から決して目を背けず、よく見て】

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(松浦だるま『累-かさね-』13巻)

 

どうも、くろやんです。

 

今回の表紙、驚きの白さ!
11巻の真っ黒表紙と対照的な白さですね。
あまりの白さと落ち着いた表情に、どこか清廉とした雰囲気を感じます。
この表紙が意味することは…。

 

 

口紅を使うのも、舞台に立つのも最後にすると宣言した累。
累の最後の舞台となるのは、羽生田が演出する『暁の姫』
始まった『暁の姫』の稽古だが、咲朱として美しい巫女を演じることができず、累は悩み苦しむことになる。

 

一方、口紅を手放した累の思惑が気になる野菊。
累が何か企んでいるに違いないと思った彼女は、羽生田と共に『永久交換』の方法に辿り着いた男がいたという場所へとやって来た。

その男の名は海道凪。
海道与の弟だった。

 

以下、13巻のネタバレを含みますので注意してください。

 

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考古学者だった海道凪は、古代の朱顔料について研究するうち、あの口紅の存在に辿り着いたそう。
現在は行方不明になっている海道凪。
彼がいた大学の考古学研究室に、何か『永久交換』についてのヒントが残っているはず。

 

そう考えた羽生田でしたが、研究室にあった資料からは『永久交換』についての情報は得られませんでした。
その時、資料に書かれていた凪の字を見た野菊が、あることに気付きます。

 

父である海道与の部屋で見つけた手帳。
その手帳に書かれた字と同じ。
以前、野菊が見つけた手帳は海道凪のものでした。

 

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(松浦だるま『累-かさね-』13巻)

 

専門的な言葉が多く、野菊は内容がわからないままでしたが、手帳に目を通した羽生田は『永久交換については書かれていなかった』と言った後、気になる箇所について、野菊にこう話します。

 

口紅の成分について。
あの口紅は、はじめ口紅のような形ではなく、粉末の状態で見つかった。
そして、粉末の内60%は未知の鉱物。
残りの40%は血液、それも複数の人間の血だったと。

 

 

ここまでは野菊に説明した羽生田でしたが、もうひとつ重要な記述『永久交換』について、手帳に書かれていた情報を教えずにいました。
それは、『永久交換』に必要なのは血だということ。

 

鏡となって映す

本番を10日後に控え、初の通し稽古となる舞台『暁の姫』
これは美しい里の巫女暁(あけ)と、醜い山の巫女宵(よい)の物語。
二人の巫女は、その土地の安寧を祈り続け、代々受け継がれてきた。

 

しかし、時代の移り変わりとともに、伝承は忘れられていく。
人々は里の巫女である美しい暁を敬愛し、山の巫女である醜い宵を疎み、誰も彼女が巫女であると信じておらず、「こんな不気味な女、ここには必要あるまい」と虐げた。

 

 

それはまさに、これまで累が人々に虐げられてきた様子と同じでした。
醜い宵が人々に「化け物め!」と罵られ、石を投げられる場面で、暁(累)はとっさに宵を庇う動きをしてしまいます。
その台本にはない動きに、通し稽古を見ていた誰もが驚きます。

 

切り抜ける演技すら思い浮かばず、沈黙する暁(累)に、醜い宵(幾)は「哀れな者を庇ったつもりか…!」と怒り、涙を流して睨みつけます。

 

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(松浦だるま『累-かさね-』13巻)

 

「わかるまい…お前には」
美しい暁を拒絶し、憎む宵。
これは、累がこれまで幾に言ってきた『あなたは何もわからないから』という言葉と同じ。

 

一度、累と顔を入れ替えて街を歩いた幾は、醜い者の心がどのようなものか、しっかりと捉えていました。
そして学生の頃も今も、累の言動を見続けてきた幾は、累の悲痛な想いを鏡となって映したのです。

 

 

通し稽古は進み、醜い容姿のために人々に虐げられた宵は、次第に憎しみをたぎらせていきます。
それは、かつて朱磐で自らを殺そうとした者たちや、この世のすべてに憎しみをたぎらせ続けた、いざなのように。
幾が演じる鬼女の気迫に、羽生田も驚きます。

 

やがて、宵は里に災いをもたらすようになります。
里の民は宵を殺そうとするが、同じ巫女である宵を哀れに思った暁は、彼女に心を改めるよう呼びかけに行く。

 

 

累が稽古中、どうしても上手くいかなかった場面。
それは暁が首から下げた鏡を宵に向け、その罪と容貌(すがた)をそしるというもの。
まるで己自身を見るようで、鏡に映る宵の醜さに恥入る姿を見ることが耐えられず、累は鏡を向けることができずにいました。

 

しかし、通し稽古の前に、幾から「今日は宵(わたし)をよく見ていて。見たくなくても、決して目を背けず、しっかりと見て」と言われていた累。
意を決して、ついに暁(累)は宵に鏡を向けて、その罪と姿を鏡に映します。

 

そこに映ったものは、己の姿に恥入り泣き惑うみじめな女ではなく、この世のすべてに憤る鬼でした。

 

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(松浦だるま『累-かさね-』13巻)

 

この世のすべてに憤り、鏡に映る自分自身ですら憎んで止まない。
そのどうしようもない哀しい怒りをよく知っている、と感じる累。
誰にも理解されないはずだった累の心(鬼)を、幾は鏡となって映したのでした。

 

それを見た累は静かに涙を流します。
そして、「私はもう…この先の暁を演じることはできません」と羽生田に言った累は、役を降りると告げます。

 

醜い者の末路

咲朱(累)が役を降りると言ったことで苛立ち、焦る羽生田。
これでは、いざなの遺志に応えることができない。
永久交換の秘密を知った羽生田は、何としても美しい女優、咲朱を完全なものにさせようと考えます。

 

以前使っていた屋敷へと累を呼び出し、羽生田は今一度『本当に役を降りるのか、咲朱として舞台に立たないのか』と問い掛けます。
累の心は変わらず。
そんな累に、羽生田は醜い者の末路について話し始めます。

 

 

いざなが亡くなった4年後。
海道与に呼び出された羽生田は、彼の屋敷の地下でおぞましい光景を見ることになります。
地下には、毛布で幾重にも巻かれた異臭を放つもの…人間がいました。
それは、いざなと顔を永久交換したであろう淵透世でした。

 

病におかされた後も、まだ生きていた透世。
「これを処分してほしい」と、海道は羽生田に命令します。

 

拒絶する羽生田でしたが、『淵透世を美しいまま終わらせるために必要なことだ』と言われ、やむを得ず羽生田は透世を車で運びます。
やって来たのは朱磐の地。

 

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(松浦だるま『累-かさね-』13巻)

 

その軽すぎる身体を背負い、羽生田は考えます。
おびただしい悪臭を放ちながら、うわごとで「のぎく…」と娘の名前を呼ぶ。
これは透世でもなければ、いざなでもない。
それなら、自分が背負っているものは、一体何だろうか。

 

葛藤しながらも、罪を犯すことを覚悟した羽生田。
透世をナイフで刺し殺し、命を奪います。
こと切れる前に、透世は野菊に対し「どうか…生きて…許すことなく…憎みなさい…私を」と言っていたそう。

 

 

羽生田の話を聞いた累の目からは、涙が溢れ出ていました。
美しく在るべき者のために、醜い者は死んだ。
「お前はどちらに成りたい?咲朱!」
そう問い掛ける羽生田に、「いいえ。私は咲朱ではないわ」と答える累。

 

あくまで拒む累に、羽生田もついに強硬手段に。
力ずくで累を押さえつけ、屋敷の地下へと連れていきます。
地下には、野菊の姿がありました。

 

口紅を塗り、母(透世)の幻を見たことで動揺した野菊は、羽生田の前で気を失い、そのまま捕まっていたのでした。
野菊と口紅を手に入れた羽生田のすること。
それは永久交換を成功させて、累を完全な咲朱へと生まれ変わらせることでした。

 

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(松浦だるま『累-かさね-』13巻)

 

永久交換の方法について知らなかった累に、羽生田は説明します。

 

朱磐神楽の中に永久交換の答えが隠されていた。
そして、海道凪の手帳に書かれていた内容。
朱磐神楽に本来あった削られたト書きに記された月紅(つきべに)という言葉は、おそらく鉱物ではなく人間の血液。

 

羽生田が導き出した永久交換の方法とは、『顔を交換する両者の月紅(血液)を日紅に含ませ使うこと』でした。

 

真実

永久交換には、両者の血が必要。
羽生田は野菊の手のひらをナイフで切りつけ、野菊の血を手に入れます。
次に累の血を手に入れようとする羽生田。
しかし、累が手を出さずに抵抗したため、羽生田は累の顔を切りつけます。

 

「どうせ要らぬ顔だ」と冷淡に言う羽生田に、涙を流して真っ直ぐ見据える累。

 

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(松浦だるま『累-かさね-』13巻)

 

誰よりもいざなのことをずっと見てきた、と反論する羽生田に「それなら、なぜ気付かないのよ!」と言う累。
「私を助けて川で死んだのが…いざなじゃなかったことに!」
累の言葉に、羽生田も野菊も目を見開き驚く。

 

 

あの時、幼い累は自分を助けている女性が母ではないことに気付きます。
いざなではないと気付いた累に、透世は最期にこう言いました。

『どうか生きて…そして、いざなさんのこと、あなたがみてあげて』

 

 

真実は…累を助けて川で亡くなったのが淵透世。
その後、海道の屋敷で3年間野菊が一緒に過ごしたのは透世ではなく、いざなだった。
そして、羽生田が海道に命じられて命を奪った相手は…いざな本人だった。

 

累の言葉が信じられず、動揺する羽生田は、尚も永久交換を実行させようとナイフを振り上げます。
しかし、過去の己が罪を犯す場面を思い出し、それ以上手が動かず。
羽生田は累たちの前から姿を消します。

 

 

累が言った真実を確かめるため、いざなを知る人物を訪ねる羽生田。
昔、いざなが掃除婦として働いていた劇場のオーナー夫人の元へ。
実は失踪している間の累も、彼女の元を訪ねていたそう。

 

17年前、オーナー夫人の元へやって来た素顔のいざなは、ある頼みをします。
ひとつは少しだけ劇場を貸してほしいということ、もうひとつは透世と累を匿ってほしいということでした。

 

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(松浦だるま『累-かさね-』13巻)

 

結局、二人を受け入れることなく透世は亡くなり、いざなも消息を絶つことになります。
その時、劇場を貸りたいざなが一人演じていたのは『暁の姫』の舞台でした。
オーナー夫人からそれを知らされた羽生田。

 

 

人生を捧げてまで愛した人を、この手で殺した。
絶望する羽生田の前に現れた累は、いざなの本当の気持ちを伝えます。

 

羽生田の書いた原稿を読み、「これは…私が舞うべき物語だ」と涙を流して言った彼女の真意。
『暁の姫』で、いざなが演じたかった役。
それは美しい巫女の暁ではなく、醜い鬼女の宵でした。

 

「私も…今、母と同じことを…望んでる」と言う累。

 

まとめ

このシリアスな重たく哀しい本編からの、あとがき漫画のHABUTAのシュールな流れがツボです。
毎度のことながら、めっちゃ筋肉モリモリですやん羽生田さん。
マッスル、マッスル~

 

さて、最終巻のひとつ前である13巻です。
今回は真実と向き合う巻ですね。
累が自分自身の心と向き合い、羽生田がいざなの真実と向き合う。

 

 

実は、今回は羽生田が裏の主人公でもあると思います。
1巻の最初からずっと登場して、累の協力者となり、いざなの過去を知る人物でもある彼ですが。
最終章から累が何を考えているのかわからなくなり、不信感を抱いた羽生田は、自らの手で永久交換を完遂させようとします。

 

それもすべては、今は亡き愛するいざなのため。
そう信じて、羽生田は汚れ役も引き受け、これまでの人生をすべていざなに捧げてきました。
しかし、彼女の最期の真実は、羽生田にとって残酷なものでした。

 

 

物語後半の真実が明らかになる場面は圧巻ですね。
あの時、累を助けたのは誰だったのか。
羽生田が殺した相手は、本当は誰だったのか。

 

そして、いざなが本当に演じたかった役。
今の累も母と同じことを考え、『醜い宵を演じたい』と思っている。
このシーンは、胸が締め付けられて涙が出てきます。

 

 

誰かの顔で舞台に立ち続けても、その賞賛や拍手は累に向けられることはない。
累が自らの顔で舞台に立ち、賞賛や拍手を向けられることがあれば…と、11巻から願っていました。
そう、これだよ!
これが見たかった!!

 

次回はいよいよ最終巻。
美醜に翻弄された哀しい女の物語が、どう終わりを迎えるのか。

 

累の最後の舞台となる『暁の姫』がどうなるのか。
自らの罪と業に、累がどう決着をつけるのか。
その他の登場人物たちが、何を思いどう動くのか。
最後の14巻楽しみです。

続きはこちら。
累-かさね-14巻のネタバレ感想【醜く無様で滑稽でも、これは淵かさねの物語】