(松浦だるま『累-かさね-』1巻)
くろやんです。
今回は松浦だるま先生が現在イブニングで連載している、『累-かさね-』を紹介しようと思います。
美醜がテーマの漫画です。
醜い顔の少女が、欲しくて止まない美しい顔を手に入れたとき、どうなるのか。
以下、1巻のネタバレを含みますので注意してください。
累-かさね-のあらすじ
『伝説の女優』と言われ、美しいままこの世を去った淵透世(ふちすけよ)
物語の主人公は彼女の娘、淵累(ふちかさね)という少女です。
累は美しい透世とは似ても似つかない、醜い容姿をしていました。
その容姿のため、子どもの頃から差別的な目で見られ、理不尽な仕打ちを受け続けます。
累には、大人になったら母親と同じ女優になりたいという夢がありました。
容姿は醜いが、母譲りの素晴らしい演技力がある累。
でも、「ブス」「化け物」と蔑まれる醜い顔のため、舞台に立つことはできない。
そんな娘のために、母親はあるものを遺していました。
それが不思議な赤い口紅。
これをぬって、自分が欲しいと思う美しい顔の相手に口づけをすると、自分と相手の顔が入れ替わるというものでした。
母の幻影は「顔も愛も奪いとってやりなさい」と、累に言います。
累はこの口紅を使って美しい顔を手に入れ、夢見ていた舞台に立ち続け、自分の居場所を得ようとしていく。
こんなあらすじです。
もう既に、明るくて楽しいストーリーじゃないことは明らかですね!
嫉妬、羨望、執着、美しいがゆえの優越感、醜いがゆえの劣等感など。
そこらじゅうドロドロした負の感情が漂っています。
口紅の魔法
初めて累が顔を奪った相手が、小学生の時に一緒のクラスだった西沢イチカ。
彼女は累をイジメていた首謀者でしたが、可愛い顔立ちをしていました。
学芸会でイチカに劇の主役を推された累。
これは、わざわざ累を晒し者にするために推薦したという。
累は『伝説の女優』の子として、主役を演じる決心をします。
でも、相変わらずイジメは続き、みんなとの合同の練習には参加させてもらえない。
「上手く演じれば、みんなに見直してもらえるかもしれない」
「淵透世の娘として認めてもらえるかもしれない」
そう思った累は、一人台詞を覚えて練習に励みます。
学芸会当日。
母譲りの見事な演技力で主役を演じていき、観客を引き込む累。
クラスメイト達も見直し始めて面白くないと思ったイチカは、強引に劇を中断させ主役を交代させようとします。
自分の顔ではどんなに努力しようと、どんなに上達しようと母の娘だと証明することすらできない。
その時、累は母の言葉を思い出す。
「口紅をぬって、あなたの欲しいものに口づけを」
言葉通り、イチカに口づけをした累。
二人の顔は入れ替わり、累の顔はイチカになり、イチカの顔は累になります。
イチカの顔で舞台に立ち、主役を演じきる累。
そこで蔑みや哀れみではない、美しい者を賞賛する眼差しを向けられます。
累は美醜による人々の反応の違いを実感します。
この口紅の魔法には、いくつか特徴がありました。
ある一定時間が経つと効果が切れてしまうということ。
そして、再び口紅をぬって口づけをすることで、顔が元に戻るということ。
累は自分の母も同じように誰かの顔を奪い、女優として生きていたのではないかと考えます。
協力者の存在
成長し、累がもうすぐ18歳になるという頃。
母親の十三回忌で実家を訪れていた時、羽生田釿互(はぶたきんご)という男が、累の前に現れます。
演出家である羽生田は、累の母(透世)の秘密を守るために、ずっと協力していたと言います。
累が考えていたように、透世は他人の顔と人生を盗み取って生きていたそう。
そして透世は羽生田に、「娘を奈落の底から白い照明の下へ導いて…」と頼んだという。
以後、羽生田は累が女優として舞台に立てるよう、協力者となります。
舞台のチケットを渡され、「そこにお前と口紅の力を必要としている女がいる」と羽生田に言われた累は、初めてプロの舞台を観に行くことに。
その舞台を観ていた累は、一人の美しい脇役の女性に目がいきます。
美しい容姿を持ちながら、どこか演技に集中できていない彼女を見て、「勿体ない。私だったら全力で演るのに!」と思う累。
舞台が終わった後、累は偶然その脇役の女性とぶつかってしまいます。
倒れた累に彼女は手を差し伸べるが、累は手を取らず立ち去ろうとする。
一緒にいた別の女性は「感じ悪い子ね!」と言うが、脇役の女性は「感じ悪くなんか無いわ。だってあれは…分をわきまえているのよ」と言う。
ぶ、分をわきまえてる( ゚Д゚)!?
すごい台詞だ…これは美人しか言えない台詞w
醜い自分が手をとることで、汚いものに触れてしまったような顔をされてしまうのでは…と、思った累の卑屈な気持ちを見透かして言ったもの。
ここで1巻が終わり、2巻ではこの脇役の女性が累と重要な関係になってきます。
まとめ
容姿のコンプレックスっていうのも、みんな大なり小なりあるんじゃないでしょうか。
顔立ちや体型についてなど。
美人やイケメンに対して「羨ましい」「あんな顔になりたい」と思う気持ちも、自然な感情じゃないかと思います。
「人はやっぱり見た目が大事なのか」という美醜のテーマ。
重いですけど、身近と言えば身近なテーマですね。
累は醜い顔のため、子どもの頃から理不尽に差別されイジメられ続けてきました。
そんな累が魔法の口紅を使って、美しい顔を手に入れ、女優としての地位を手に入れていこうとする。
1巻では累の小学生~高校生の話がメインとなります。
これから累が、光輝く美しい女優へと生まれ変われるサクセスストーリーとなるのか。
途中まで読み進めましたが、なかなか一筋縄ではいかなそうですね。
嫉妬、羨望、執着、劣等感。
いろいろな感情が交錯して暗くなりがちな本編ですけど、たまに挟まれる挿絵と四コマにほのぼのします。
続きはこちら。
累-かさね-2巻のネタバレ感想【本物よりもより良く、美しくなればいい】