累-かさね-12巻のネタバレ感想【終着地へと向かって、どん底から歯車は回り出す】

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(松浦だるま『累-かさね-』12巻)

 

どうも、くろやんです。

 

前回11巻の真っ黒い表紙から、今回はガラッと雰囲気が変わりました。
おぼろげな霞がかったような幻想的な表紙です。
そして、やっぱり綺麗。
鏡のように本当の姿を映しているのも良い。

 

 

前回11巻、天ヶ崎と幾によって野菊が逃がされたことで、累は咲朱として舞台に立てなくなってしまう。
咲朱は降板となり、羽生田の前からも姿を消した累は深い絶望の中にいた。

 

誰かの姿で舞台に立ち続けても、その賞賛や拍手は淵累に向けられることはない。
絶望の末に累は自らの命を終わらせようとした。
しかし、そのとき累は母(いざな)の最期の言葉を思い出す。

 

生きるべき理由を見出した累は、母のこれまでの足跡を辿ることに。
やがて、宿命の地である朱磐(あけいわ)で待ち伏せしていた羽生田と再会した累は…。

 

以下、12巻のネタバレを含みますので注意してください。

 

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朱磐の伝説

4ヶ月ぶりに再会する累と羽生田。
いつものように会話する二人ですが、妙に落ち着いた累の様子に、羽生田は違和感を覚えます。
まるで火が消えたようだと。

 

かつて朱磐の村があった場所は、現在は何も無いさびれた荒れ野になっていました。
そこを羽生田が案内し、過去ここで何が起きたのか、いざなについて、口紅についてを話していきます。

 

 

生まれてすぐに醜い容姿ゆえ、死を望まれたいざな。
彼女は平坂千草という助産婦に助けられ、山奥の小屋で密かに育てられることになる。

 

生きることを否定されて、己の醜さを突きつけられながら、いざなは身の内に憎しみをたぎらせていく。
やがて、彼女は自らの運命を塗り変える魔性の朱を手に入れる。

 

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(松浦だるま『累-かさね-』12巻)

 

口づけで人の顔を奪う、日紅(ひべに)という鉱物顔料。
白永山(しらながやま)という山頂の池に隠されていたのを、いざなが見つけたんだそう。

 

実は日紅に繋がるヒントが、朱磐の伝説を伝える神楽の中に織り込まれていたと羽生田は説明します。
その伝説というのは、この地に災いをもたらした醜い鬼女が、美しい巫女によって滅ぼされるというもの。

 

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(松浦だるま『累-かさね-』12巻)

 

口づけで人の顔を奪うという日紅の使い方は、この鬼女が巫女に口づけて魂を奪おうとする描写からきているようです。
そして、神楽の最後は『丙午(ひのえうま)生まれの醜い女児は殺さねば、鬼女の魂をもって災いをもたらす』という伝承を唱えて締めくくるそう。

 

その因習によって、死を望まれ生きることを否定され、憎しみをたぎらせ続けたいざな。
ある時、ついに美しい顔を奪い、醜い鬼女から美しい女神へと生まれ変わる。
いざなは自らを殺そうとした者たちを殺し、呪い続けた朱磐に炎を放ち、この地を滅ぼしたのでした。

 

 

その時の光景を間近で見てきた羽生田は、あとにも先にも、あれ以上に美しい景色を見たことがないと言います。
そして、その光景をもう一度この目で見たいと、累に話す羽生田。
彼は演出家として、自分が上演する舞台で累に主演をつとめてほしいと頼みます。

 

星詠む夜、本当の姿で

羽生田が上演したいという舞台は昔、淵透世(いざな)が出演することが決まっていましたが、彼女がいなくなったため果たせずにいた悲願でもありました。
累が光の下(舞台)に戻ることは、いざなの願いでもあると、羽生田は累に言います。

 

羽生田の話を聞いて、彼の舞台に出ることを承諾した累。
しかし、何かを覚悟したような、彼女なりに思うところがあって、舞台に出ることを引き受けたようです。

 

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(松浦だるま『累-かさね-』12巻)

 

やはり何か累の様子が違う、と感じる羽生田。
その雰囲気は、まるで自らの死を匂わせた時のいざなのようだと、羽生田は思います。
累と羽生田、両者の思惑が違うまま、新しい舞台の計画が進んでいきます。

 

 

まずは野菊の顔で咲朱として復帰するのが一番手っ取り早い…と話しているうちに、野菊の方から仕掛けてきます。
富士原から『事務所に咲朱が現れた』と、羽生田に連絡が入ります。
野菊自らが現れ、「星詠む夜。本当の姿ではじめて会った場所、私はそこにいる」と台詞めいたことを言い残し、去っていったそう。

 

これは、累と野菊がはじめて素顔で対面した鎌倉の海辺のことを指し、『夜の海で待つ』というメッセージだろうと累は羽生田に話します。
あからさまな罠だ。
そう考える羽生田は、自分一人がその場所に赴き、様子を見てくると言います。

 

羽生田と別れたあとの累。
何かを決心したように、一人でどこかへと向かいます。

 

 

累がやって来た場所…それは、かつて通っていた高校の体育館でした。
野菊が『星詠む夜』という詩的な言い回しを使うのは、おかしい。
きっと野菊の口を借りた別の人間がいる、そう累は考えたのでした。
累の読み通り、これは野菊ではなく幾が考えたもの。

 

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(松浦だるま『累-かさね-』1巻)

 

ここは高校時代、素顔の累と幾がはじめて会い、ジョバンニの役を通して、星を詠んだ場所。
体育館に累と野菊と幾の三人が揃います。
累に対して憎しみの眼差しを向ける野菊に、「私を殺すつもりなら少し待って。あなたに大事な話があるの」と言う累。

 

 

累が何か話しかけたところで、「よぅ、仲間はずれとはつれねぇな」と思わぬ人物が現れます。
羽生田でした。
再会してから累の様子がおかしいと不信感を抱いた羽生田は、海に向かう振りをして累を見張っていたんだそう。

 

自分を出し抜こうとした累に怒り、彼女の胸倉を掴む羽生田。
「一体お前は何を考えているんだ?すべて嘘だったのか!?朱磐で見せた舞台への意思は…」と詰め寄る羽生田に、「嘘じゃないわ!」と返す累。

 

そして、野菊の顔で羽生田の舞台に出ると言った累は、その場にいる誰もが驚愕する言葉を口にします。

 

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(松浦だるま『累-かさね-』12巻)

 

口紅を使うのも…舞台に立つのも…それで最後にする。
野菊に、『もう一度だけ咲朱を舞台に立たせてほしい』と頼む累に、信じられないと否定して戸惑う野菊。

 

そんな野菊に、累は自らの口紅を手渡そうとします。
「これなら…信じてもらえる?交換の主導権を…あなたに譲るわ」と。

 

終着地へと向かう

累の行動に、「何やってんだ、お前は!?」と慌てる羽生田。
それを渡すということは、累の生命を渡すのと等しいということ。
口紅を手にした野菊は、取り戻そうとする羽生田に『近付けば口紅を砕く』と脅します。

 

そんな野菊に、今度は羽生田が『口紅に何かすれば、天ヶ崎が無事では済まない』と脅します。
互いに脅し合い、睨み合う羽生田と野菊。
おっかない二人。

 

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(松浦だるま『累-かさね-』12巻)

 

すると、二人の間に入った累が「次の舞台の幕が下りるまで辛抱してくれれば、私はあなたの手でどうなってもかまわない」と、野菊に約束します。
さらに羽生田にも、「これでもあなたの望みは叶えられるでしょう?」と納得させる累。

 

これまでと違う累の様子に、野菊も羽生田も幾も、それぞれが驚き戸惑います。
一体、累は何を考えているのか。

 

 

こうして、またどん底から歯車は回り出し、累の最後の舞台となる『暁(あけ)の姫』の舞台が幕を開けることになります。
羽生田が書いたというこの作品は、美しい巫女と醜い鬼女が登場する朱磐の伝説を元にしたもの。
それは過去から現在へ、いざなと透世、累と野菊の物語でもありました。

 

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(松浦だるま『累-かさね-』12巻)

 

この舞台は、美しい巫女と醜い鬼女の主演が二人必要になります。
そこで咲朱(累)が美しい巫女として舞台に立ち、醜い鬼女は累の推薦から、幾が演じることになりました。

 

始まった稽古は好調なすべり出しと言えず、累は咲朱として美しい巫女を演じるイメージが想像できず、悩み苦しむことになります。
また、幾も醜い鬼女という役が掴めず、互いに演出家である羽生田からダメ出しを受けることに。
特に累の方は、容赦なく冷たい言葉を浴びせる羽生田(ひどいよ)

 

 

そして、累に対して不信感を抱く野菊。
同じように不信感を抱く羽生田に密かに接触し、『累が永久交換の方法をすでに知り、何か企んでいるんじゃないか』と、そこで二人の考えが一致します。

 

永久交換の方法について知るため、ある場所へとやって来た羽生田と野菊。
それは、過去に永久交換の方法にたどり着いた男がいたという、大学の考古学研究室でした。

 

その男の名は海道凪(かいどうなぎ)
彼は海道与の弟だった。

 

まとめ

とうとう最終章という感じがします。
累の最後の舞台となる『暁の姫』
この舞台で、累は口紅を使うのも舞台に立つのも最後にすると宣言しました。
さらに、口紅まで野菊に渡して「私はあなたの手でどうなってもかまわない」と言った累の胸中は…。

 

 

今回、印象的だったのが累と羽生田の関係性の変化です。
これまで羽生田が累の協力者となり、他者の顔や命を奪った秘密を共有し合った共犯者であり、ある程度は信頼感もある関係でした。
しかし、前回から累の心境に変化があったことで、羽生田は様子がおかしい累に対し不信感を抱くようになります。

 

羽生田はあくまで、いざなの遺志『累を光の下へ導くこと』をどんな手段を使ってでも叶えようとしています。
そんな羽生田に今回累が言った、「あなたは自分や母の意思ばかりで、私の意思は考えてもくれないのね」という言葉が特に印象的でした。

 

それにしても、口紅を手放したあとの累に対して、羽生田の態度が冷たいよぉ!
累の頬はたいたり、めっちゃひどい台詞言ったり。
HABUTA~( ゚Д゚)ひどいっすわ。
最終章から悪役となりつつある羽生田(あっ、もともと怪しいキャラではあったけど)

 

 

あと、累と幾の心が近くなったのも見どころだと思いました。
『暁の姫』の役が自分の中に入ってこないと悩む累は、同じ女優である幾に相談します。
そこで累の才能をうらやむ幾に、累は美しい容姿をもつ幾の言葉に苛立ち、「何もわからないくせに…!」と言い放ちます。
すると今度は幾が、「あなたにだってわからないでしょう。同じ女優としての私の劣等感は」と強い口調で返します。

 

この二人の本音のぶつけ合いが良いです。
互いに相手の気持ちはわかり合えないけど、寄り添うことに意味があるのかもしれない。
そんな二人の距離が少し近くなった、この場面が今回よかったです。

 

 

いよいよ終わりへと近付きつつありますね。
累の最後の舞台となる『暁の姫』が、どんな風に仕上がるのか。
累や野菊や羽生田が、それぞれ違う思惑を抱きながら、最後の舞台が始まろうとしています。

 

『累-かさね-』は、どのキャラにもドラマがあって、感情移入してしまうから面白い。
暗くドロドロとした感情のぶつけ合いや、本質を突いた鋭い台詞など、それがどれもすごく頭に残るんですよねぇ。

続きはこちら。
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