累-かさね-人間に本能的に備わっているもの

累-かさね-

(松浦だるま『累-かさね-』6巻21p)

 

こういう人間心理を容赦なく表現しているところがね、良いと思うんですよ。

累-かさね-6巻で、累が天ヶ崎に対してとった行動のところです。

 

以下、原作の内容を含みます。

 

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いつものように稽古帰り、累は雨野と電話をしている最中に手袋を落としてしまう。

 

その落とした手袋を、累の動向を探っていた天ヶ崎が拾い、「落としましたよ」と声を掛けて、累に手渡そうとする。
自分の背後にいた天ヶ崎を一目見て、眉をひそめる累。

 

「あ…ありがとうございます」と礼は言うものの、累はすぐに手袋を受け取らず。
結局、躊躇いながら手袋の端を掴み上げると、足早に去ってしまう。

そして、累は『私…今、何を思った?』と、自分の言動に驚く。

 

確かに累は、天ヶ崎の容姿を見て嫌悪感を抱き、どこか見下したような視線を向けていたんですね。
手袋を受け取るときの動きにも、その感情がにじみ出ています。

 

これまで容姿のことで虐げられ蔑まれてきた経験をもつ累が、無意識に自分と同じ立場であるはずの天ヶ崎を蔑んでしまった。
累自身も丹沢ニナの顔でいることが当たり前になってしまい、自分の素顔でいるときの気持ちが薄れていたんでしょうね。

 

 

その後ニナが亡くなり、累は自分の素顔でいるようになってから、以前よりずっと惨めな想いを感じるようになります。
外に出ると人の目が気になってしまい、おどおどと縮こまってしまう。

『醜いお前に生きる価値は無い』と言われているように、累は感じます。

蔑みや嫌悪、好奇や哀れみ。
自分に向けられる視線を感じながら、累は天ヶ崎との出来事を思い出します。

 

自分も同じように、誰かに対してそんな視線を向けてしまった。
自分よりも劣った者を見下そうとする感情。
そして、それに伴う優越感。

累はあれは人間に本能的に備わっているものだと気付きます。

 

 

シビア!容赦ない!
いや、気持ちは痛いほど分かります。
そういう感情は程度の差はあれ、誰しも持っていると思います。

そして、これは容姿だけに限らず、学歴や成績や年収や家柄や…もう色々なことで「自分の方が上だ」「自分は劣っている」と、感じてしまうものじゃないでしょうか。

 

誰かを見下すことによって、自分の方が上だと確認し安心できる。
累が思ったように、これは本能的に備わっているものでしょうね…。
そう思ってしまうのも、人間ですから。

 

もしかしたら、悟りを開くような境地であらゆることを達観すると、そんな感情を抱いて悩むこともなくなる…かも?
悟りを開いて達観したことないので、わからんですが。

 

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累-かさね-
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あの漫画のここが気になる!!!
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