(羽海野チカ『3月のライオン』3巻)
くろやんです。
前回から引き続き、『3月のライオン』3巻のあらすじや感想、見どころを紹介していこうと思います。
前回2巻のネタバレ感想はこちら。
3月のライオン2巻のネタバレ感想【惑わせ毒をはらむ香子の言葉と獣の咆哮】
3巻は獅子王戦の対局がメインとなっていきます。
以下、3巻のネタバレを含みます。
家族のぬくもり
2巻最後で年内の対局をすべて終えた零ですが。
そのあとに、ひどい熱を出して寝込んでしまいます。
12月31日。
突然アポもなく、心配した川本三姉妹が零の部屋にやって来ます。
零は病院へ連れて行かれ、医者に看てもらって『ただの風邪』ということがわかり…そのまま川本家にお世話になることに。
三姉妹から手厚い看病を受ける零。
姉妹それぞれにお粥を作って貰って、おでこの汗を拭いて貰って、冷えピタを貼って貰うって手厚すぎ!
そして、夜になり年越しの時間になります。
皆コタツに入ってぬくぬくしながら、うたた寝しています。
零と川本家(三姉妹とおじいちゃん)と猫たちと。
(羽海野チカ『3月のライオン』3巻)
ほのぼの~
大晦日の夜って感じ。
この紅白見ながらダラーンとする空気がいいですね。
皆寝てしまって、零とあかりさんが話をします。
「前はもっとすごかったの。今よりあと三人多かったから」
そう話すあかりさんの言葉には、亡くなったお母さんとおばあちゃん。
そして、今この家に居ないお父さんのことが含まれていました。
大晦日に上がり込んでお世話になってしまって…と謝る零に、あかりさんが言った言葉が何とも切ない。
「あなたがいてくれなかったら、私きっと今ここで一人っきりで、これ片付けながら泣いちゃってたわ」
零とあかり、二人でちょっと涙ぐみながら、除夜の鐘が鳴り始めて年が明けていきます。
翌日の元旦。
零は川本家でお正月を過ごすことになります。
年賀状が届いて、美咲おばさんがやって来て、お年玉を貰って、皆でおせちを食べて…いや~お正月の光景ですねぇ。
さて、まったり過ごしたあとは夜になりまして。
ここで川本家の信じられない事実が発覚!
あかりさんが「ひな、モモをお風呂に入れてくれる?というわけで、桐山君。ここ使うから2階に上がってくれる?」と言います。
ここを使う?
(羽海野チカ『3月のライオン』3巻)
何ですって!?
居間の窓を開けたら、いきなりお風呂ってどういうことなの。
昔は銭湯に行ってたらしく、あとで庭に増築したものらしい。
まるで、劇的ビフォーアフターに出てくるお宅のよう…。
「ごめんねーれいちゃん」と、ひな。
「れーちゃん、見ないでねー」と、モモ。
そして、慌てて2階に上がっていく零。
予想外の衝撃と家族の温かさを感じながら零は眠りにつき、川本家で3日まで過ごすことになりました。
闘争心を燃やして
ほのぼの川本家の年末年始の話が終わったあとは、将棋の対局の話になります。
今回、3巻の主となる戦いは「獅子王戦挑戦者決定トーナメント」
前年までの成績によって6組に分けられトーナメントが行われ、各クラスの上位者が本戦リーグに参加できる。
獅子王戦は日本最大の新聞社主催で、ほかの棋戦に比べて規模が大きく世間からの注目度が高いらしい。
おまけに賞金総額も高い!
地位、名誉、お金と獲得できるため棋士の志気も上がるそうです。
零の対戦相手は辻井武史九段。
さすがA級九段。
対局中に零も「つえーっ」と、心の中で叫ぶほど。
しかも、将棋以外の攻撃力も発揮しているという…ね。
(羽海野チカ『3月のライオン』3巻)
どうにかこうにか勝利を納めた零。
次に戦う相手は島田八段。
そして、同じく勝ち進んだ零の先輩棋士にあたるスミスの次の対戦相手。
これが後藤九段でした。
後藤と言えばそう。
2巻で零の義姉の香子が好きと言っていた男。
後藤も零と同じくプロ棋士でした。
しかもA級九段。
零からすればレベル違いの強さを持っている男です。
ちょうど将棋会館でバッタリ顔を合わせた零と後藤。
以前、零は香子のことで後藤と揉めて、彼に叩きのめされたことがありました。
(羽海野チカ『3月のライオン』3巻)
顔がいかつい後藤。
3巻で何かと顔が恐いとよく言われています。
確かに!
そして、後藤は零に香子の話をします。
「あのストーカー女の事だけどさぁ、早くやめさせるようにって。迷惑してんだよね、俺」
これは零に対しての挑発でした。
実は妻帯者だった後藤(しかも奥さんは入院中で、香子が一方的に後藤に好意を寄せているらしい)
しかし、『香子が本気で後藤のことが好き』ということを零は知っていました。
後藤に殴りかかろうとする零に、とっさに止める先輩棋士スミス。
会長が現れたおかげで、その場は何とかガチンコ殴り合いにならずに済みます。
香子の事もあり、零は後藤への闘争心を燃やします。
川本家に訪れた際にも、自分の決意を表明して「頑張ります」と誓った零。
島田八段に勝ったあとは、因縁の後藤と戦う。
そう自分の中で想像していた零ですが、トーナメントの行方は思わぬ展開になっていきます。
A級棋士の戦い
零と島田の対局の前に、スミスと後藤の対局がありました。
「軽く」「広く」が持ち味のスミスと、「重く」「堅い」が持ち味の後藤。
後藤の守りの強さと重い一撃によって、スミスは完敗します。
そして、対局のあと。
後藤はスミスの動きについて、冷静に感想を述べます。
しかも妙に男気ある表情と言葉。
(後藤、ただ顔が恐いだけじゃなかった!)
後藤が勝ち進み、次に零と島田の対局になります。
零は島田八段との対局は初めてでした。
対戦前に、「勝つ将棋というより、負けない将棋を指す人だ。こういうタイプの人との対局は長くなるな。苦手だ…」と思う零。
島田との対局が始まり、零は攻めていたはずが、いつの間にか守りになっていることに気付きます。
この対局に勝ち、その先にある後藤との戦いを思い描いていた零ですが…。
島田のレベルを読み間違えてしまい、窮地に立たされます。
(羽海野チカ『3月のライオン』3巻)
目の前の相手をナメてかかっていたことに恥ずかしさを感じる零。
逃げたい、消えたい。
そう思いながらも、零は最後まで指し続けました。
結果、挽回はできずに完敗。
零は本命の後藤と戦う前に、島田に敗れてしまいます。
対局後、猛烈に落ち込む零。
数日飲まず食わずで眠り続けたため、脱水症状にまでなってしまう。
(落ち込み方がハンパない!)
どうにか回復した零は学校に行くことにします。
どんより落ち込んでいた零に、教師の林田先生が声を掛けます。
零の対戦相手だった島田のことを「努力を絵に描いたような人だ」と話す林田。
そして、零に『島田八段の研究会に入ってみたら?』とアドバイスをしてくれます。
同じ頃、島田も弟弟子にあたる二海堂と「桐山を研究会に誘うか?」という話をしていました。
島田も対局以来、零に対してどこか興味を覚えたよう。
その後、島田と後藤の対局が始まります。
獅子王戦挑戦者決定トーナメント決勝戦は3番勝負。
初日、ガチンコの殴り合いのような戦いの勝者は後藤でした。
互いに貫禄ある戦いを見せるA級棋士二人。
(羽海野チカ『3月のライオン』3巻)
二回戦目。
これまたガチンコの戦い!
前回より力まかせの大人げない戦い!
そうして、後輩棋士たちが不安げに見守る中、最後に対局室からフラフラになった島田が出てきて「勝ったぜ」と告げる。
なりふり構っていないw
最後の三回戦。
互いに1勝1敗、もう負けるわけにはいかない。
島田と後藤の勝負の行方は…?
零が将棋会館に着いたとき、対局は終わったところでした。
対局室には戦いを終えたばかりの島田と、彼の様子を見に来た二海堂がいました。
勝ったのは島田八段でした。
全力で戦って勝利を得た島田の姿を見て、何かを感じて胸を打たれた零。
そして、島田も零の姿を見つけて「よぉ、桐山」と声を掛けます。
次に二人が口を開いて出た言葉は、偶然にも同じものでした。
(羽海野チカ『3月のライオン』3巻)
こうして3巻の最後で、零は島田八段の研究会に入ることになります。
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まとめ
この巻では、獅子王戦の挑戦者決定トーナメントがアツいですね。
主人公である零以外の棋士たちの戦いも見どころです。
このトーナメントに勝ち進んだ者は、宗谷名人と戦えるということです。
それにしても、獅子王戦って名前やたらカッコいい。
3巻から登場する島田と後藤。
どちらもA級棋士で実力も貫禄もありまくり。
後藤なんて顔がいかつくて恐くて、とても将棋を指す人に見えないw
しかし読み進めてみると、後藤もとても味のある人物だということが分かります。
そして、零を負かした島田。
背が高く痩せて地味な印象ですが、彼がいいキャラなんですよね。
将棋に対して地道に努力を重ねていく姿勢も好感が持てるし、故郷を想うところも人間性が出ています。
おまけに、胃痛持ちで髪の毛の具合がアレなところも。
どこか身近に感じることのできる人物で好きですねぇ。
この巻でも印象的だった台詞や心理描写。
落ち込んでいた零に、林田先生が「落ち込んでる時に冷たいモノ食ってるヤツがあるか!命取りになるぞ!あったかいモノをとれ」って、細かい台詞ですけど良いんですよね。
確かにそうだなぁと感じてしまう。
最後、決勝戦で後藤に勝ったあとの島田の様子もリアル。
「対局直後は、勝ったほうが激しく消耗している場合が多いのだ。それこそ、声もうまく出せない程に」
現実の将棋の戦いでもそうなんでしょうか。
こういう細かい描写がリアリティあるんですよね。
巻末の羽海野先生のあとがきが面白い。
漫画家さんも自分の作品に対する読者の反応が気になるんですね。
先生曰くネガティブエンジンも、方向を自分で見極めて解き放つことができれば味方になるらしい。
そうだよなぁ、妙に納得してしまった。
続きはこちら。
3月のライオン4巻のネタバレ感想【故郷への想いを胸に獅子王へ挑む】